韓国ソウル市・踏十里 古美術商街の伝統遊戯

韓国ソウル市東大門区の地下鉄5号線「踏十里(タプシムニ・답십리)駅」近くにある「古美術商街(고미술상가)」には、韓国の様々な骨董品が陳列販売されています。

この古美術商街には、主に朝鮮時代の民芸品や生活用具が所狭しと並べられており、その規模と内容物は国立クラスの民俗博物館に匹敵するといっても過言ではありません。

古い遊戯関係の品々も数多くあり、「將棋(장기・チャンギ)」の盤駒、「陞卿圖(승경도・スンギョンド)」、「投壷(투호・トゥホ)」、「ユンノリ(윷놀이・擲柶)」、「パドゥク(바둑・囲碁)」、日本時代の「花闘(화투・ファトゥ)」などが色々な店に置いてあります。

使い込まれたユンノリのユッ(윷・棒状のサイコロ)。
ユンノリでは、この4本のユッを放り投げ、出た表と裏の組合せにより目数が決定します。

將棋(チャンギ)駒の中でも貴重とされる朝鮮時代の木枝で作られた駒。
この駒は、同じ一本の枝から作られているので、大きさや形がそれぞれ異なっています。

同じく古い木製のチャンギ駒。
駒の側面に使い込まれた跡があり、年期を感じさせるものとなっています。

現在、チャンギ駒は八角形となっていますが、昔は丸い駒も使用されていました。

通路の壁際に、無造作に立て掛けられていた年季の入ったチャンギ盤。

このチャンギ盤には、下駄のような二本の脚が付いていました。

盤の裏面。組木と釘で脚がはめ込まれています。

この盤には紐が付いており、壁にかけられるようになっていました。

こちらは、低い卓袱台のような造りのチャンギ盤。

日本統治時代の花闘(화투・花札)。
裏打ちがされていない切りっぱなしで、材質は厚みがない紙でしたが、手にしてみると、意外と使いやすそうな感触でした。

韓国花札の雨の光札は、小野道風ではなく韓服を着た人物になっているのですが、この日本時代の韓国花札には、高下駄を履いた小野道風っぽい人物が描かれています。
また、日本花札の小野道風は烏帽子姿ですが、この小野道風らしき人物は、橙色の短い帽子を被っていました。

現在の韓国花札の八月札・「空山(コンサン・공산)」の月の中には、商標や動物など、何かしらの絵が入っているのですが、骨董街で見た日本時代の花札は、いずれも月の中に何も描かれていませんでした。

古い韓国花札を見て思ったのですが、月の中に商標や動物など入るのが当たり前となったのは、恐らく、近年になってからのような気がします。
また、現在の韓国花札の「芒に雁」は、三羽のうちの一番下にいる雁が赤くなっているのですが、この古い花札は全ての雁が同じ色になっていました。

李氏朝鮮時代の官位双六・「陞卿圖(승경도・スンギョンド)」。
「從卿圖(승경도・スンギョンド)」や「從政圖(종정도・チョンジョンド)」、「勝官圖(승관도・スンガンド)」とも表記されます。
陞卿圖は双六遊びだけでなく、将来の吉凶を占う目的でも使用されていました。

陞卿圖は、日本の浄土双六などと同じく「飛び双六」のルールで遊ばれるもので、紙面に朝鮮時代の役職が書かれています。

陞卿圖に使う木製のサイコロ。側面に出目の数を示す点が刻まれています。

古い民間信仰の品々を専門に扱っているお店では、「骨牌(골패・コルペ)」と同じ目が刻印された「籌馬(麻雀の点棒」がありました。

この籌馬は、古い麻雀の点棒と同じく天九牌の目が刻まれています。

店の人に話しを聞くと、この籌馬は麻雀の点棒ではなく、占いの道具として用いる籤だそうです。

使い方を聞いてみると、日本の御神籤や中華系の寺廟に置いてある占い道具(靈籤・籤卦)と同じで、籤の入った筒をシャカシャカと振り、地面に落ちた一本の目で吉凶を占うとのことです。

長い時間をかけて踏十里・古美術商街を散策し、多くの伝統遊戯を見つけたのですが、探していた「闘銭(투전・トゥジョン)」と「雙六(쌍육・サンユク)」を目にすることが出来ませんでした。

ある店主からは、雙六は時たま有るが、闘銭はこの古美術商街にはどこも置いていないと断言までされてしまいました。

しかし、骨董の世界では、いつどこで何が入荷されるか判らないので、機会があれば何度でも踏十里の古美術街訪れてみようと思っています。

踏十里・古美術商街は地下鉄出口の近くにあり、漢字の筆談や日本語が通じる店もいくつかあるので、朝鮮半島の民俗文化に興味のある人にはお勧めです。