■ 世界遊戯紀行


■ 韓国・チャンギの旅 ■


 2007年11月に、韓国ソウル市内で開催される「日韓将棋交流会」という日本将棋連盟と韓国将棋(チャンギ)協会の公式行事に参加すべく、韓国将棋仲間の劉朗さんと共に、一週間のチャンギの旅に出かけた。


 

 まずは東京から深夜バスで大阪を目指し、大阪南港より出ているフェリーで韓国釜山に渡り、そこからソウルに到るというのが、今回の我々の旅路である。大阪を経由したのは何も船に乗る為だけではなく、日本一チャンギが盛んな大阪のコリアンタウンで、レベルの高い地元プレイヤー達とチャンギを対局をする目的があった。




■ 大阪生野区・巽公園 ■

 大阪に着き、直ぐさま縁台チャンギが毎日行われているという生野区の巽公園を訪れると、公園内の東屋にビニールの風避けが張られている場所があった。近付いて中を覗くと、多くの人が縁台将棋やチャンギに興じる姿が目に飛び込んで来た。


 

 

 東屋の中は、将棋とチャンギの場所があり、それぞれ対局を楽しんでいた。年齢層は御年配の方がほとんどで、対局をせずに仲間と会う為に来ている人も多く見受けられた。その光景は、まるで子供が遊び相手を探しに公園に集まる様に似ており、この東屋も、子供時代に作った秘密基地のようで、まさに童心に帰った老人達の懐かしさ溢れる光景であった。



 

 


 大の韓国マニアでチャンギ愛好家の劉朗さんは、以前にもこの公園の縁台チャンギを訪れたことがあり、中にいる人と面 識があるので、挨拶と軽い雑談を交わした後、早速先程対局していた御年配の方と早速対局を開始した。



 

 仲間うちでは高手な劉朗さんであったが、やはり何十年と打ち続け、この場所で毎日打っている巽公園の人にはかなり苦戦していた。駒をくるりと裏返しながら盤に叩き付けるように置く相手の姿からは、棋力だけでなく打ち方もかなり熟練している様が伺えた。



 

 対局中、この公園チャンギの常連の方々が続々と姿を現し、見なれぬ 新参者である私達に、当初は訝し気な表情を浮かべていたが、純粋にチャンギを愛好しているものだと解ると、にこやかな表情を浮かべ親し気に迎え入れてくれた。その中で、公園に登場するや周囲を威圧するような表情で腕をグルングルンと振り回し、柔軟体操を始めこちらを窺っていたゴツくて喧嘩が強そうな方が、その気の強さから劉朗さんに勝負を申し込み、対局をすることとなった。



 

 結果は劉朗さんが苦戦したあげく何とか勝利を収めたのだが、これで負けん気に火が着いた相手は治まらず、即座に再戦を申し入れ、第二戦が始まった。見ている方々も勝負が白熱してくると韓国語が飛び出し、行く前から、既に韓国にいるような気分である。



 

 第二戦は、闘争心溢れるこの相手に序盤から気迫で押され、劉朗さんは良い所なく敗北した。だが、ここで勢いにのった相手はさらに追い討ちをかけるように第三戦を申し入れ、それに勝つとさらに「もう一回」と、即座に第四戦を申し入れた。初戦の敗北がよほどこたえたのか、この余所者を完膚なきまでに叩きのめして、巽公園のレベルを思い知らせてやるというような、男らしい心意気がありありと伺える行動であった。



 

 

 やがて船の出港時間が近付き、巽公園を仕方なく後にすることになったのだが、出来るならば、一日中、いや、毎日この公園で子供のように遊んでいたいものだと思った。なぜそこまで思うかというと、昔、仲の良い友達たちと作った秘密基地というあの理想的な遊び場が、この場所では感じられるからである。



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