■ 大阪〜釜山航路での対局 ■


 生野区の巽公園を後にし、大阪港より釜山行きの大型客船・パンスターフェリーに乗り込む。船内は、九割以上が日本観光からの帰路に就く韓国人で占められていた。大阪港を離れ、しばらく船内を散策した後、人が集まるロビーで劉朗さんと早速チャンギを対局。すると、どこからともなく多くの人達が集まって来て、我々の対局を観戦し始めた。


 


 何局か対局を続けていると、見物していたある韓国人のお年寄りが、自分の部屋で友達とやりたいから貸してくれと声を掛けてきた。後程、そのお年寄りの部屋に行き、本場韓国人同士の対局を観戦する。やはり子供の頃より嗜んでいるだけあって、駒の動かし方が自然であり、打つ手も鋭さが感じられる。





この二人の対局を見ていて、感心したことがある。それは、勝負が終わるとまたすぐに駒を並べ始め、何度も対局を繰り返すことであった。私も子供の頃は、友達と将棋をすると、勝負がついても「もう一回やろう」と、即座に申し出て、飽きるまで何度も遊んでいたものだ。しかし、大人になり勝ち負けにこだわるようになってしまい、余計なプライドやプレッシャーから、同じ相手と何度も勝負することに重たいものを感じるようになってしまっていた。そのようなものから解き放たれて、純粋に対局を楽しんでいる姿を見て、これこそが遊びの本質であると気付かされ、深い感銘を受けた。



 


二人の対局を熱心に観戦していると、チャンギを貸してくれと声を掛けた老人が劉朗さんに対局を申し込み、船上で初の日韓チャンギ対決の火蓋が切って落とされた。 結果は善戦むなしく韓国の御老人の勝利となったが、劉朗さんも健闘して中々見ごたえのある勝負であった。 日本人にしては中々の腕前であると認めたこの御老人は、チャンギを嗜む自分の息子に腕試しをさせようと、劉朗さんと対戦するように促し、続けて日韓チャンギ対局の第2ステージが始まった。実力が伯仲し、序盤から一進一退を繰り返す両者であったが、終盤に劉朗さんが手痛いミスをし、惜しくも敗北を喫した。



 


 対局が終わり、お互い握手で健闘を讃え、清清しい気持ちで部屋を後にしたのだが、唯一の心残りがあった。それは、自分自身の対局が出来なかったことである。しかし、旅はまだ始まったばかりだ。これからいくらでも本場のチャンギ指しと対局出来るだろう。そう思うと胸が弾み、否応がなしに今回の旅への期待が膨らんでいった。



チャンギ,Korean chess,changgi,韓国将棋

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