須原花

須原花

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「須原花」は、長野県木曽郡大桑村の須原地区に伝わる花札遊戯です。
現地では「花合わせ」と呼ばれており、江戸末期頃より遊び継がれているといわれています。
現在でもお年寄り女性の間で健全な娯楽として遊ばれており、長きに渡って地域住民の親睦を深める役割を果たしています。

■須原花の遊び方
●参加人数…4〜5人(4人が一般的)
出落ちによって、本戦は3人の勝負となる。
手順は一般的な花合わせと同じく、手札から一枚出して場の同月札に合わせ、山札をめくり、場に同月札があれば合わせ取る。

■須原花で使用する用具
●花札48枚
●通り札
●場の表示札
●ホーセン(碁石)

須原花では、「通りシマ役」の月を表示する「通り札」を使用する。通り札は、各月の札1枚をまとめたものである。

場の表示札は、「小役・中役・本役」の三つの場を表す札である。札には「小・中・本」と書かれている。

須原花では、得点用のチップをホーセンと呼び、碁石を用いる。
ホーセンは、「白石1個=20点・黒石1個=5点」で、各自250点「白石11個・黒石6個」を持って開始する。
「白石11個・黒石6個」のホーセンを「一もと(ヒトモト)」と呼んでおり、最初は、各自「一もと(250点)」ずつ所有する。
全体の一ゲームで、参加者が4人の場合は、六皿ぶんの「六もと」、5人の場合は七皿ぶんの「七もと」を用意する。
つまり、参加人数分のホーセン以外に、「一もと」を2皿、合計「二もと(フタモト)」ぶんを余計に用意してゲームを開始する。

■ホーセン(碁石)の得点
●小役「白石1個=20点・黒石1個=5点」
●中役「白石1個=10点・黒石1個=2.5点」
●本役「白石1個=5点・黒石1個=1.25点」
※黒石4個=白石1個

最初の場は、小役から開始するが、誰かが最初の「一もと(250点)」を失ったら、場が「小役」から「中役」に変わり、碁石1個の点数が半減する。
「一もと」のホーセンを失った人は、「継ぐ」といって、新たに「一もと」のホーセンを借りて勝負を続行する。
中役の時に、誰かが「一もと」を失った場合は、場が「中役」から「本役」に変わり、碁石1個の点数が更に半減する。
「一もと」のホーセンを失った人は、新たに「一もと」のホーセンを借りて勝負を続行する。
全体でホーセンは「二もと(一もと×2)」までしか継ぐことができないので、二もと継いだ後に、誰かが破産したらゲーム終了となる。
ホーセンは、一人が「一もと」を2回継いでもよい。
須原花では、ホーセンを全て失い破産することをマウと呼んでいる。

■札の点数

須原花には札に点数があり、雨以外の光札が30点、秋役に関係する札(猪・雁・鹿)が20点、秋役札以外の種札と小野道風が10点、短冊札が5点、カス札が0点となっている。

■手順(全て反時計回りに進行)
最初に、場に広げられた裏向きの札から各自一枚ずつ引いて、表に公開する。
引いた札の月数が最も多い人が親となる。同月の場合は、点数の高い方が親になる。
親は札をよく切って、左隣の「乙(オト)」に「乙割(カット)」をしてもらう。
親は「オト割」の済んだ札を「手7場6」で配り、残りを山札にして場の中央に置く。
配り方は、手7場6になれば、どのように配っても構わないが、必ず各自に同数枚ずつ配布する。
一般的な配り方は、「手4枚→場3枚→手2枚→場3枚→手2枚」、「手4枚→場3枚→手3枚→場3枚」などであるが、場から配ってもよい。
配られた場に同月札が4枚揃っていた時は、配り直しとなる。
また、場に「通り札」と同月の3枚が出ていた場合も配り直しとなる。
手に同月札が4枚あった場合も配り直しとなるが、その4枚を公開した後、裏返してよく混ぜ、その中の一枚を山に入れるルールもあるので、どちらを採用するかは事前に確認しておく。

■出落ち
本戦は3人で行うので、親から勝負に「出る」か「落ちる(下りる)」かを宣言していく。
落ちると宣言した人は、自分の手札を山札に重ね、「ハント(見賃)」と呼ばれる「下り賃」を場に払う。
ハントは、小役の時は「白石1個と黒石2個(30点)」、中役の時は「白石3個(30点)」、中役の時は「白石6個(30点)」ぶんを用意する。
誰も勝負から落ちず、順番的に落ちることを余儀なくされた人は、ハントを払わなくてもよい。
また、手持ちのホーセン(碁石)が足りず、ハントを払えない場合は、勝負に出なければならない。

■追う(ボウ)
もし、下ろされる人が「基準点の100点」を取れそうな時は、「追う(ボウ)」と宣言して親を代わりに下ろすことが出来る。
親が「追(ボ)う」ことを拒んだら、その右隣が「追(ボ)われる」ことになり、もし拒んだら、次の3番目の人は強制的に追い出されて競技に参加できなくなる。
追われて落ちた場合、その右隣が親となるが、追うを宣言したものは親にはなれず、必ずオトになる。
追われた人は、ハント(見賃)を場に払わなくてもよい。
追うを宣言して勝負に参加し、基準点(100点)に満たなかった場合、追われて落ちた人に対し、追った人数分の白石(追った人数が一人ならば1個、2人ならば2個)を罰則として払う。
追うには条件があり、罰則のホーセンが払えない人は、追うを宣言することが出来ない。
罰則のホーセンにも中役(×2)・本役(×4)が適用され、碁石の個数が場によって変化する。

■競技
場にある山札を親の右隣が「中割り(カット)」した後、通り札を1月にして競技を開始する。
中割りは、札の上下を入れ替えても、よく切り混ぜてもよい。
親から手番を開始して、花合わせの手順を繰り返し、場札と山札が全て無くなったら競技終了となる。

■場札に関する規則
場札に同月札が二枚出ていた場合は、必ず点数の低い方から取らなければならない。
これは、場の同月札・2枚ともに得点があった場合で、片方が得点札でもう一枚がカス札であった場合は、得点札を取ることができる。
一番最初の場札に同月札が三枚出ていた場合は、同月札一枚で全て取ることができる。
一番最初の場札に通りと同月の札が三枚出ていた場合は、配り直しとなる。

■背負い札(つかえ)
須原花では、「背負(ショ)い札」という捨て札に対する法度(制約)がある。
相手に札が入ると役が出来る時、その役に関係する札を出すことが出来なくなる。
これを「背負(ショ)い札」という。
「花見(桜に幕・菊に盃)」の役を例にすると、相手の取り札に「桜に幕」がある場合、自分の手に「菊の札」があると、それは「ショイ札」となり、場に捨てられなくなる。
松のシマ役を例にすると、相手の取り札に松が二枚ある場合、自分の手札に松の札があると、それは背負い札となり、場に捨てられなくなる。
ただし、「小菅原(赤短)」や「ミム(青短)」といった3枚役などの場合、相手が1枚だけ赤短または青短を取っている時は、手に赤短または青短に関係する札を持っていても出すことができる。
もし、相手が赤短や青短を2枚取っていたら、手にある赤短や青短を完成させる札を出すことはできない。
背負い札を出す場合は、必ず自分の「手役(取り札や、ツカミなどで完成する可能性の有る出来役)」に関係する札から出さなければならない。
この時、「手役です」と必ず宣言してから場に札を捨てる。
また、手に背負い札しか無い時は、必ず「相手が完成する可能性のある役点」が低い方から捨てなければならない。
背負い札でも「残りの同月2枚」を持っていれば、「2枚持ち」と宣言して、1枚ずつ捨て札にすることができる。
手に「背負い札」と「他の札」がある場合は、どちらを先に出しても構わないが、背負い札を出す時は、必ず「手役」か「2枚持ち」から捨てなければならない。
※もし、法度の背負い札を出した場合は、周囲から注意され、その札を手に戻して出し直すことになる。
※出す札が背負い札かどうか判断するために、取り札は公開情報として相手に見えるように並べなければならない。

■札点の集計
競技終了後、各自取った札の合計点を数える。
100点を基準としているので、取り札の合計が100点に満たない人は、足りない点数を基準を超えた人に碁石で支払う。
例えば、「A130点・B90点・C80点」の場合、Bは10点、Cは20点をAに支払う。
もし、ホーセンが足りない場合は、手持ちのホーセンを全て支払う。不足分は払わなくてもよい。
須原花では、ちょうど100点ピッタリのことを「ツッパリ」という。
全員がツッパリのことを「サンツ(三人がツッパリ)」と呼び、無勝負になる。
サンツになったら、「通り」は進行せずに、同じ親で再勝負となる。

※小役「白石1個=20点・黒石1個=5点」
※中役「白石1個=10点・黒石1個=2.5点」
※本役「白石1個=5点・黒石1個=1.25点」

■須原花の役一覧



■出来役について
「シマ役(1パイ)」は、1月・2月・3月・8月・11月・12月となっており、それぞれ同月を4枚揃えると完成する。
「通りシマ役(3バイ)」は、通り札に表示された1〜12月の札と同月の4枚を揃えると完成する。
「ミム」は、揃った瞬間に、その場で参加者から50、落ちている者から25の御祝儀を貰える。
この御祝儀は、持っているホーセン(碁石)以外から支払う。
ミムは御祝儀以外に2ハイの役点が付く。
「ゴロウジュウ」が完成すると、他の者が作った役は「通りシマ」と「ミムの御祝儀」以外、全て無効になる。
「ゴロウジュウ」と「雁(ガン)の八月札」が重なると、「大鳥ゴロウジュウ」となって6ハイ役になる。
「四本役」に「雁(ガン)の札」が重なると、「大鳥(2ハイ)」+「四本役(6パイ)」で8ハイの役になる。
須原花では8ハイが最大役で、それ以上の役は加算されない。

■ふけ
終了時に取り札の合計点が15点以下だと「ふけ」が成立する。

ふけが成立すると、ふけた者が勝ちとなり、ふけ役の点数を各自からもらう。
ふけの時は、札点や役点のやり取りをしない。
ふけには以下の種類がある。
・15ぶけ(15点以下)…1パイ
・10ぶけ(10点以下)…2ハイ
・5ぶけ(5点以下)…3バイ
・なしぶけ(0点)…全体の遊戯が終了し、他者の持ち点を総取りできる
※なしぶけ以外のふけが成立したら、ふけた者は次回の親になり、通り札も次の月に進行する。

■役点の集計
札点の精算が済んだら、次は役の点数を精算する。
須原花では役の単位をハイと呼ぶ。(例:1パイ・2ハイ・3バイ…)
役点の精算は、相手より不足している分をそれぞれ払う。
例えば、「A3バイ・B1パイ・C0ハイ」の場合、Bは「Aに2ハイ」払い、Cは「Aに3バイ・Bに1パイ」支払う。
精算時に額が足りない場合は、手持ちのホーセンを全て支払う。
不足分は払わなくてもよい

■役の精算
●小役「1パイ=白石1個」
●中役「1パイ=白石2個」
●本役「1パイ=白石4個」

役点精算には、以下の様な支払い方法もあるが、現在では簡略化されて、上記の様に支払うことが多い。

※以下は、現在では殆ど使われていない清算方法ですが、資料的に記載しておきます。
※解りやすいように、ハイを点で表記しています。

■ひと昔前の清算法
●三おん(全員が1パイ差)
・A2点 B1点 C0点
・A3点 B2点 C1点
・A4点 B3点 C2点
精算:Cは3点を払い、Aが独占する

●六おん
・A4点 B2点 C0点
精算:Cの負担でAが6点を独占する

●九おん
・A6点 B3点 C0点
精算:Cの負担でAが9点を独占する

●四一(よっち)の出
・A3点 B1点 C0点
・A4点 B2点 C1点
精算:Cが4点、Bが1点を払い、Aが独占する

●四一(よっち)の取
・A3点 B2点 C0点
精算:Cが5点払い、Aが4点、Bが1点を貰う

●五二(ぐに)の出
・A4点 B1点 C0点
精算:Cが5点、Bが2点を払い、Aが独占する

●五二(ぐに)の取
・A4点 B3点 C0点
精算:Cが7点払い、Aが5点、Bが2点を貰う

■ハントの精算
役の精算時に、落ちた人が、役の出来た人にハント(下り賃)を支払う。
ハントは、一回の遊戯で「参加者全員(三人)に役が出来た」場合や、「誰にも役が出来なかった」場合は、払わなくてもよい。
ハントは、三人のうち、二人か一人が役を作った場合に発生する。

■ハントの精算例
●小役の場
・一人だけ1パイ役→黒石2個(10点)
・一人または、二人の役の合計が2ハイの場合→白石1個
・3バイ以上の役→白石1個と黒石2個
※二人が3バイ以上の時は、「白石1個・黒石2個」を大体で分配する

●中役の場
・一人だけ1パイ役→白石1個
・一人または、二人の役の合計が2ハイの場合→白石2個
・3バイ以上の役→白石3個
※二人が3バイ以上の時は、「白石2個・黒石4個」を大体で分配する

●本役の場
・一人だけ1パイ役→白石2個
・一人または、二人の役の合計が2ハイの場合→白石4個
・3バイ以上の役→白石6個
※二人が3バイ以上の時は、「白石6個」を大体で分配する

■ゲームの終了
一勝負が終了したら、通り札を1枚めくり、次の月札を表示させて手順を開始する。

勝負を繰り返し、「二もと」分のホーセンが継がれた後に、誰かがマッタら(破産したら)終了となる。
精算時に「一もと」継いだ人は、獲得したホーセンから「一もと=250点(白石11個・黒石5点)」を引いたものが得点となる。
「二もと」継いだ人は、獲得したホーセンから「500点」を引いたものが得点となる。
最終的な精算は、「一もと(白石11個・黒石5点)」ぶんを100とする。
残りの碁石は、白1個+黒1個で10する。
端数(半端・ハバ)が出た場合は、特別にそれだけ「白1+黒2=10(白1個=5・黒2個=5)」とする。
つまり、黒1個の端数は切り捨てて精算するので、黒3個の余りは5、黒1個の余りは0とする。

■須原花・その他の用語
4月札…黒い実
5月タネ札…ゴンボ
7月札…赤い実
8月雁札…ガン
山に月…テッカリ
割れる…役が揃わなくなること
コス…小菅原の略称
両板が付く…「山に月(テッカリ)」と「桜に幕」に「菊に盃」が付くこと
手がおぞい…手札が悪い

「須原花」実際の対戦動画
https://www.youtube.com/watch?v=TnGCedv-JL4&list=PLE8psx3qauiFjygsM14X5k-lGNUZ-A-sc