■ 慶尚南道・鎮海市 ■


 釜山に着き、昔から日本と所縁の深い土地である慶尚南道の鎮海(チネ)を目指し、昼下がり頃に到着する。この鎮海は、15世紀には約2500人もの日本人が居住していた場所で、大日本帝国時代は日本海軍の軍港都市として栄え、当時の日本人が植えた桜並木が美しいことでも有名な土地である。



 

 


 昔の日本の面 影を残す鎮海の町をしばらく散策していると、市場の片隅で、小銭を投げて遊んでいる集団に出くわした。この遊びは以前にタイでも見たことがあり、それと全く同じルールで行われていたのが驚きであった。



 

 


 遊び方は、決められた場所から地面 に描かれた小さな円に向けて小銭を投げ、その円の中心部の近い位置に小銭を落としたプレイヤーが、他に投げられた小銭をすべて貰えるというものである。



 

 

しばらくこの遊びを見ていると、案の定、お前もやれと笑顔を向けてきたので、やろうと思ったのだが、貴重な小銭が不足していたので、仕方なくその場を笑顔で後にした。





■ 韓国花札・六百間■

しばらく鎮海を散策し、鎮海駅のロータリー横の公園に入ると、そこで花札とトランプに興じるグループを発見した。トランプで遊ぶグループは、あの大阪の巽公園で見たのと全く同じビニールの風避けを使用し、焚き火用の薪まで用意する用意周到ぶりであった。このビニールの風避けは、巽公園と同じコリアンタウンにある桃谷公園の在日の人達も縁台ゲームに使用しており、海を挟んでも同じ方法で寒さを凌いでいる様を見て、やはり同じ民族は思考回路が同じなのかもしれない、という感慨にとらわれた。


 

 


どのようなルールで遊ばれているかしばらく観察していると、トランプはどうやらセブンブリッジであることが判ったが、花札の方が、以前に調べたミンファトゥのようだが、少し違う点があり釈然としない。



 

 


これは一体なんなんだろうと花札を注意深く見守り、資料用に写 真を撮っていると、正面の位置で花札に参加していた老人に見咎められ、写 真を撮るなと激しい口調で文句を言われてしまった。申し訳なく頭を下げて写 真を撮るのを止めると、その老人はさらに文句を続け、言葉が通じないとみると、英語で文句を言い、こちらが困った顔をしていると、「アーユーフィリピーン?」と聞いてきたので、「イルボン(日本)」というと、「ああ、日本人ですか。そうですか」と、意外にも丁寧な口調の日本語が返ってきた。そして、「あなたは、日本のどこから来ましたか?」と、私ににこやかな表情を向けてきた。



 


深夜バスに乗り、船で風呂の時間を逃してボロボロの風貌+南方系丸出しの顔をした自分が、フィリピン人に間違えられても確かにおかしくはないが、それよりも、博打の現場を写 真に撮っていた失礼な人間が日本人だと判ると、急に親切な態度で接してくれるようになったことが、予想外の反応で非常に驚きであった。



 

 


その後、その老人は、今遊ばれている花札のルールが、「六百間(韓国語のユクベクではなく、日本語の「ろっぴゃっけん」と言っていた)」であることを教えてくれ、ルールについて訊ねると、役などを一つ一つ日本語で説明してくれた。他にも花札のルールは沢山あるが、この公園では、「六百間」しかやらないのだという。韓国花札のルールについてあれこれ聞くと、その老人はこちらが質問した「コドリ」「トリジッコテン」「ソッタ」「ミンファトゥ」などのルールをすべて知っていた。



 

 


その老人からしばらく日本語で花札の説明を受けていると、劉朗さんがやってきた。鎮海では自由行動にしていたので、どうやら待ち合わせの時間が来たようである。私はこの老人に日本語で感謝を述べ、深々と頭を下げて、その場を後にした。そして劉朗さんと共に、本日宿泊する慶尚南道の咸安(ハマン)を目指し、目の前の駅から列車に乗り込んだ。




■ 花闘・韓国の状況■

韓国では、トランプよりも花札に人気があり、「三人集まれば必ず花札が始まる」と言われるほど盛んに興じられております。その為、韓国のどのコンビニエンスストアにも、必ず韓国花札(花闘・ファットゥ)が約300円程で売られており、もはや生活用具の一部となっております。また、ネットカフェでも韓国花札の「ゴーストップ」の看板を掲げたお店を数多く目にすることができます。


 

 



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