慶尚南道・咸安〜ソウル ■


 咸安(ハマン)の宿に到着後、夜の町を散策し、夕食に鴨のプルコギを食す。翌日、任那日本府と密接な関係にあった伽耶の遺跡群を観光する。古代に日本と同じ文化を共有していたと言う土地だけあって、野山から見る農村の風景は、まさに昔の日本の農村そのものの景色であった。


 

 


 その後、バスで馬山(マサン)を経由して、夜七時頃に首都・ソウルに到着する。ソウルの鐘路(チョンノ)にあるバックパッカーが集まる宿で荷物をおろし、宿近くの韓国風中華料理で夕食を食べ、翌日以降の予定を確認する。翌日は、ソウル市内の囲碁・チャンギを専門に扱うテレビ局・ブレインTVで開催される、「日韓将棋交流会」に出席し、その翌日はチャンギ協会本部で、地元プレイヤー達と対局というのが、ここソウルでの予定である。いよいよ明日から、地元のチャンギ指しと実際に対局できるかと思うと、いやが上にも期待が高まってくる。




■ 日韓将棋交流会 ■


 翌日になり、地下鉄1号線・加山デジタル団地(カサンディジトルタンジ)駅で下車し、午前十時、待ち合わせ場所のブレインTVに到着する。そこで「韓国将棋協会・東京支部」のチャンギ仲間達と将棋プロ七段の所司和晴先生に無事合流し、会場であるブレインTV社内に入る。



 


会場内に入ると、韓日将棋交流というような横断幕 が張られており、その近くでは、子供達が ワイワイと楽しそうにチャンギで遊んでいた。地元プレイヤーと対戦する前に、まずはウォーミングアップとばかりに、 私も早速劉朗さんと対戦を始める。横では所司先生が、地元の強豪中学生と対戦を始められた。



 


やがて、多くのチャンギ関係の方々が来場して着席し、日韓将棋交流会が始まった。まずは来場者全員の自己紹介から始まり、日本と韓国の将棋の状況をそれぞれ報告。韓国ではチャンギのプロは、日本のプロ棋士のように将棋だけで生活していけないと、口々に語るチャンギの関係者たち。そして彼らは、日本のプロ棋士の年棒について質問し、その答えに「すごいな…」と、一様に感嘆の声を漏らしていた。その様を見て、やはり、その国の伝統文化は何にせよ、国を始め、皆で支援していかなければならないのだと実感した。



 


市場原理だか何だか知らないが、日本文化を否定するような政治家が、アメリカの年次改革要望書に書かれてあった特殊法人の民営化という要求通 りに「特殊法人は潰せ!」とヒステリックにがなりたて、マスコミも一斉に特殊法人や公務員を叩き始め、それに煽動されたB層といわれる無知な国民までもが、国が金をばらまいているだけで利益を産まない法人は何でもかんでも潰せと言い始め、 日本語という根幹的な日本文化を研究する「国立国語研究所」までもが廃止に追い込まれたと報道されていたことを思い出し、日本の将棋連盟も民営化して株式会社・日本将棋連盟にしろとヒステリックに騒がれ始めたらえらいことになるなと、軽い危機感を覚えた。



 


その後、将棋とチャンギの歴史について意見が交換され、式典が終わり、会場は自由対局の場所となった。早速地元の小学生と対戦してみる。やはり馴れ親しんでいるだけあって、駒の動かし方がスムーズで板についている。後先考えない子供ならではの打ち方ではあったものの、中々面 白い勝負が出来た。二局指した後、対戦した子供から日本将棋をやってくれとせがまれる。対戦してみると、相手は定石を知っているようで、いきなり振り飛車から穴熊の体制に入った。こちらもその間、矢倉に組んで対応する。相手は振った飛車でこちらに攻めてくる。なかなか鋭い攻めであったが、持ち駒の使い方が馴れていないせいか、取った駒を中々張らない。さらに、こちらの張り駒に対してもあまりにも無防備であった。これも日本と韓国の将棋に対する感覚の違いであろう。



 

 


自由対局が進む中、隣のスタジオでは所司先生の将棋講座の収録が始まった。内容は、主に地元の子供達に将棋の基本を教えるというものであり、ボードを使った解説が済んだら、所司先生が参加者全員と多面 指しをするというものである。この講座の通訳は、韓国将棋協会・東京支部長の宋さんが担当し、終始なごやかな口調で韓国の子供達とやりとりをしていた。この模様はテレビカメラに納められ、ブレインTVで放映されるとのことである。



 

 


所司先生の日本将棋講座が進む中、隣の部屋では相変わらず自由対局が続けられていた。日本人と韓国人がお互いの将棋で言葉不要のコミュニケーションを図っている様は、平和で楽しく、とても理想的な世界であった。やがて収録を終えられた所司先生と宋さんが合流し、日韓将棋対局の楽しく貴重な時間が流れて行った。



 

 

時間になり、日韓将棋交流会の初日の行事が終わった。打ち上げはソウル・新村の宋さんお気に入りのサムギョプサル(豚三枚肉の焼肉)の店である。ここの料理はとても美味しく、本当に楽しいお酒が飲めた。日韓の将棋を通 して皆が親しく打ち解け、こんなにも楽しい時が過ごせるとは、本当に素晴らしく幸せな一日であった。




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