先日、タイのトランプ「ポック・デン」を紹介したので、再びタイのゲームについて書こうと思います。
タイの路地を歩いていると、タイ将棋「マックルック」の縁台対局をよく目にします。
タイは、英仏の植民地化の野望を外交で躱して独立を保っただけに、西洋チェスの対局を殆ど見かける事が無く、縁台ではマックルックの対局ばかりを目にします。
このマックルックですが、歩の駒であるビアの初期配置や昇格の位置が、将棋と同じなので、アユタヤ時代の朱印船貿易と関連付けて、お互いが影響を与え合ったと仮説を唱える人もいます。
その駒の昇格についてですが、ビアが敵陣三段目に入ったら将棋の成りと同じく駒を裏返し、今まで前に一歩しか進めなかったのが、斜め四方向に進めるようになります。
この裏返しの成り駒は、ビアだけでなく、なんと一般的に裏返す事のないルア(船の駒)までもが昇格しているのを見た事がありました。
場所は、バンコクのヤワラート(中華街)のお寺の境内で、縁台マックルックが三つ立っている中の一つが、そのルールで行われていました。
これは、世界の将棋研究の第一人者である岡野さんの著した「タイの将棋・マックルックの指し方と現地情報」の中にも「ルア・ガーイ(ビアが裏返ったらビア・ガーイ)」として紹介されており、2つある駒の片方だけ裏返すのと、両方とも裏返す方法があるそうです。
対局を見ていると、カロリーを鱈腹摂取していそうなプヨプヨのお坊さんが、「もっと近くに来い」という感じで手招きし、近付くと椅子まで差し出してくれました。
座って対局を見ていると、今まで普通に動いていたルアが、敵陣三段目に入ったと同時に裏返り、従来の縦横移動に加え、斜め四方向にも一歩ずつ動けるようになったので、これがあの「ルア・ガーイ」かと感動しました。
ここで行われていた対局では、ルア・ガーイに成れるのは、お互い一つのルアだけでした。
このルア・ガーイは、かなり強力な駒で、詰め駒として大きな役割を果たしていたので、終盤にこの駒を失った方が一気に劣勢になっていました。
暑い中、一休みしようと、ぶらり立ち寄ったお寺で、このような変則マックルックの対局を発見できるとは、まさに思いがけない大収穫でした。