タイ将棋・マークルック(หมากรุกไทย)は、他の将棋類に比べて駒の力が弱く、終盤に駒枯れで膠着状態が発生するので、それを避ける為の引分ルールがいくつか用意されています。
スティールメイトで引分になるのはチェスと同じですが、マークルックの場合、終盤に盤面の駒が少なくなった局面で、歩の駒である「ビア(เบี้ย)」が全て昇格したら、不利な方が引分宣言をすることができます。
引分宣言をした後に、劣勢側が詰まされることなく規定の手数を指せれば、うまく逃げ切って引分となります。
この手数は基本数と呼ばれるもので、盤上に残っている駒の種類と数により、64手・44手・32手・22手・16手・8手と数が変化していきます。
少々解りにくいですが、この基本数から盤上の駒の数を引いた合計が、残りの手数となります。
しかし、優勝者を決める大会でこのような引き分けが頻発したら、トーナメントが進まなくなってしまう可能性があります。
そこで、引分が発生した際に採用されているのが、「マークポン(หมากป้อง)」という公式試合用の完全決着ルールです。
「マークポーン(หมากป้อง)」の「マーク(หมาก)」は(駒/駒を使ったゲーム)、「ポン(ป้อง)」は(防ぐ・防御する・防衛する)なので、マークポンとは、Defense Chess、つまり防御将棋という意味になります。
ゲームの規則は、相手の王駒である「クン(ขุน)」の駒を「王手(ルッ・กรุก)」した瞬間に勝利が確定するというものです。
ただし、王手をかけた自分の駒が、王駒以外の相手の駒に取られる位置にあった場合は、勝ちとはなりません。
このルールは、本来のマークルックと違い、非常に展開が早く、戦略も全く異なる別のゲームとなっています。
先日、マークルックと「マークホット(หมากฮอส・タイチェッカー)」の強者で、国際ドラフツの選手でもあるタイ人・ベンさんが来日した際に、このマークポンを教えてもらいました。
遊んでみた感想は、「マー(ม้า・馬)」という飛び道具を使えば、わずか3手で王手(詰み)になってしまうので、開始から全く油断が出来ず、いきなり終盤から始まったような緊張感でした。
ゲーム自体も展開が早く、マークルックに比べて短時間で決着がついてしまいました。
マークポーンの他、「マークホット(หมากฮอส)」の定石などを教えてもらった際に、終盤にマークルックのような引分ルールがあることも教えてもらいました。
それは、お互いに「ホット(ฮอส・昇格駒)」がある終盤の駒枯れした状態で、不利な方から引分を提案できるというものでした。
引分提案が受け入れられたら、提案した側は自分の手番を数え、駒の損得が無い状態で16手指したら引分となります。
このカウントは、表向きの駒である「ビア(เบี้ย)」ではなく、裏返った「ホット(昇格駒)」を動かした時だけ、手数を数えるそうです。
もし、昇格駒以外のビアを動かしたら、カウントは無効になり、次から再び数え直すということです。
その他、ベンさんにマークホットの序盤の基本を色々と教えてもらいました。
タイでは毎年5月に「タイ・オープン(International Draughts Tournament Thailand Open)」というドラフツの国際大会が開催されており、欧州を中心とした世界各国から選手があつまるのですが、タイからはベンさんのようなマークルックやマークホットの強豪が多数参加しています。
この大会は、誰でも参加できるので、ドラフツだけでなく、タイの様々なゲーム文化を知るよい機会となっています。
もし、タイオープンに参加したい方がいましたら、詳細をお伝えいたしますので、ご連絡頂ければと思います。
※旧ブログにマックルックの他の特別規定について紹介していますので、ご興味のある方はご覧下さい。