先日、ベトナムの紙牌「Tổ Tôm(トートム)」について、ベトナム留学生の方に色々と教えてもらいました。
「Tổ Tôm(トートム)」は、馬吊牌(マァディアオパイ)系の紙牌で、「萬・Vạn(ヴァン)」、「文・Văn(ヴァン)」、「索・Sách(サッ)」の3種類がそれぞれ「1~9」まで4枚ずつあり、特殊札3種が4枚ずつ、合計120枚のカードで構成されています。
これは、馬吊牌の「萬貫(ワングァン)」、「文銭(ウェンチェン)」、「索子(スオズ)」と同じで、このスートが「萬子(ワンズ)」、「索子(スオズ)」、「筒子(トンズ)」になり、骨牌(グゥパイ)の素材と結合して現在の麻雀になったといわれております。
「Tổ Tôm(トートム)」には、何種類か遊び方があり、その中で、「親に24枚、子に19枚」ずつ配り、合計100枚の札を使用して5人で遊ぶ「chắn(ジャン)」という遊び方の概要を教えてもらいました。
ベトナムも元々は漢字文化圏で、「Tổ Tôm(トートム)」も用語が漢字ならば一目瞭然で理解できると思うのですが、現在、ベトナムで漢字を使用する人はいなくなってしまいました。
19世紀にベトナムに来ていた宣教師が、現地の寺院など宗教施設を破壊するよう煽動して迫害されたので、その宣教団の保護を名目に、ナポレオン3世にフランス軍派遣の要請を出し、フランスとスペインがベトナムを攻撃し、フランスがベトナムを侵略して植民地にしました。
そして、ベトナムの漢字と独自の漢字文字「字喃(チューノム)」をローマ字表記する為に、カトリックの宣教師が考案した文字が、現在ではベトナム公用文字「クオック・グー(国語)」となり、漢字を読めるベトナム人は、学者以外にはいなくなってしまいました。
日本も敗戦後、アメリカによって漢字とひらがなを廃止して、ローマ字表記にさせられそうになった歴史もありましたが。
現在はローマ字表記が識字率を向上させたとベトナム国内でクォックグーを肯定する趨勢になっていますが、長年培ってきた文字という根幹的な文化を異民族の都合で破壊され、先祖が遺した過去の貴重な文献さえも読めず、それに学べなくなってしまう様は、文化の断絶に繋がっているので複雑に思っています。